家族信託は、平成18年に「信託法」が大改正され翌19年に施行されて、ようやく本格的に使えるようになった制度でまだ歴史は新しいです。遺言や後見といった民法の範囲の概念からは大きく覆しており、新たな仕組みを持って、遺言や後見で対応しきれなった財産管理が可能となったのです。
「子」からの相談で、「父」の推定相続人として、「子」及び「父の前妻の子」(音信不通)がおり、「父」は、体は元気だが、最近物忘れが徐々に酷くなり、近い将来認知症になるのではと心配している。
①任意後見制度を利用し、「子」を将来の後見人に指名しておいた場合、仮に「父」の相続財産がかなり多い場合、「父の前妻の子」との関係で相続が混乱することが予想され、財産内容が複雑で、家庭裁判所の管理が相当厳しくなることが考えられます。
②「父」が全財産を「子」に相続させるとの遺言書を作成した場合、「父の前妻の子」が「父」の死亡を知れば遺留分減殺請求をしてくる可能性が高いので、財産が共有となり将来的に面倒なことになります。
「父」を委託者兼当初受益者、「子」を受託者とし、「子」を二次受益者として、全財産を信託財産とする(年金受入口座除く)家族信託契約を「父」と「子」で結びます。契約書の中で、条項として、「本信託の受益権は相続によって承継されない。」「受益権者が死亡した場合は、その者の受益権は消滅し、次順位の者が新たな受益権を得る。」を盛り込みます。